タモリが名古屋弁をミヤアミヤアと表現していた。名古屋弁を使用する者にとって、あまり気持ちが良い言われ方ではなかったが、さすがに元ミュージシャン、タモリは耳が良い。 平針弁は名古屋弁をさらに煮詰めたような言葉なので、このミヤアミヤアを説明するのには打って付けであると思われます。 平針の人はa+iの音が言えません。これはア段+イの意味ですから、カ+イ(つまりカイ)、同様にサイ、タイ、ナイ、ハイとワ行に至るまでことごとく言えないのです。言えないのでその音をi+yaにしてしまうのです。おわかりでしょうか。カイ→きゃあ、ナイ→にゃあ、ハイ→ひゃあという具合です。 この音便化(平針音便とでも呼ぼうかな)は、和市が身近な国語辞書に沿って勘定したところ、実に1200余語もありました。一般会話に使用される単語がいったいいくつあるかは知りませんが、そのうちの1000語以上が平針音便化しているとしたら、それはミヤアミヤアと聞こえても仕方ないと思うのです。さらに付け加えるならば、キャアキャア、ニャアニャア、リャアリャアなのですよ、平針弁は。 しかしこのような音の変化は世界中に良く見られることで、一番有名なのはイギリスの庶民階級の人々が話す言葉です。彼等はエイという音が言えません。言えないのでエイはアイと言います。例をあげれば、スペインがスパイン、ペイパー(紙)はパイパーという具合です。 ずいぶん古い映画ですが、オードリー・ヘップバーンの「マイ・フェア・レディ」は、このナマリを矯正しつつ、田舎娘が立派なレディに仕上がっていくお話でした。 その他に、「ア」の音が言いたくない外人もいて、私に「ブスストップ」と言うので、思わず立ち止まったら、バスストップ(バス停)を尋ねていたのでした。 またスペイン人は、Jの音をどうしてもHと言いたいらしく何度「じゅんこ(JYUNKO)」と教えても、ヒュンコ、ヒュンコと呼ぶのです。 ハヒフヘホは全部パピプペポにしないと気がすまない人々もいます。(例 テレホン→テレポン) このようにしゃきゃあでもきゃあぎゃあでも、でゃあてゃあの人がなまりゃあす。うしろめてゃあとも思わんと、わりゃあもんにもしたらんと、やあみたぎゃあ、わきやあやあといこみゃあか。 ああ、ミャアミャア、リャアリャアやっちゃった。 ※注 後半部分訳・・・・・・ 社会でも海外でもだいたいの人が訛まっています。(だからそのナマリを)後ろめたく思わないで、また笑い者にもしないで、相身互い、和気相合といきましょうよ。 |
第2の伊勢湾台風になるかならんかの瀬戸際でちょっぴりそれて、台風26号は日本海へ走り抜けました。 「朝方からようイキるなア(いやに蒸し暑いね)。これってよォ、伊勢湾台風の時とおんなじじゃにゃあ?」 26号接近の日、いろいろな所でこんな会話がやりとりされました。 思い返せば昭和34年、でっかいのが来るぞ来るぞと言われつつも、それは大阪へ上陸する予定だったのです。今のようにくどいほど繰り返して台風情報があるわけでなし、たいがいがラジオでヘラヘラと聞いていただけなのです。 「それが急に進路がこっちへふってきたもんで大慌てだったわさア。ウもスもあれへんかったでかんわ」 「そうそう。それにわしら、水の恐さなんかあんまり知れへんかったもんねエ」 知れへんはずです。もともと平針村は郷の島、今の平針北小学校のあたりにあったのですが、近くの天白川がたびたび決壊し、その度に水入り(浸水)の被害に遭いました。 エジプトはナイルの賜物。 ナイル川の度々の氾濫ゆえにエジプト人は、天文・土木・測量・数学等の科学を発達させ、かのエジプト文明を築きました。それなら天白川の氾濫で平針人も天白文明を築けたはずなんですが、さにあらず。 「まァあかん。こんなとこおるとしょっちゅううベーッタンコになっちゃうで、もうちっと、たっきゃあ所に越そみゃあか」 と、南の高台へ高台へと動いてきちゃったのです。 それから幾星霜。村も拡がり、恐さを知らない人々は、また低めの所でも暮らすようになりました。天白川支流の繁盛(ハンモリ)川は、ちょっと多めの雨で、すぐに溢れてしまいます。今の塚本食堂のあたりなどまるで池。 「水入りがあるとよォ、畳の上をどじょやふなっこがはーしり回っとるでかんわ、アハハハ」 アハハハなのです、皆の衆。しょっちゅうの床上浸水で、慣れているとは言え、この豪放磊落。 「伊勢湾台風の時なんか、柱と鴨居が閉じたり開いたりしてよオ。まア、昔の家てゃあどうゆうエエふうに考えたるしらん思って感心しとったがね。ほんでも小屋のトタンなんかゼーンブぶっ飛んじゃって、ヒーラヒラこいとっただにイ」。 30数年前のあの暴風雨の最中にもこの余裕。これぞ平針人気質なのです。 私、御当地に嫁して20年弱。一度も大きな災害に遭遇したことがありません。犬は犬を恐がる人に牙を剥いて襲いかかります。アハハの人々には、台風も寄ってこないのではないでしょうか。 |
