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たとえば回覧板を届けに行った時、あるい町内の伝達事項を言いに行った時などに、お年寄りから 「ごてゃあぎさまでござゃあました」 と言われた事がないだろうか。これは「ご大儀様」であって、つまり「ご苦労様」という労をねぎらう言葉の、最上級の武家言葉であります。時代劇で殿様が言う「大儀じゃ」と言えば良く分かると思います。ご大儀様は個人的な用件ではなく、公的な場面で用いられます。平針は、純粋な農村がその成り立ちではなく、帰農武士や土着公家(?)が発祥なのでどうも部分的に大げさなのです。 また、「とりもつ」と言えば「縁談をとりもつ」などのように、双方の間に立って世話をすることなのですが、平針では、 「ねえさまァ、そこの醤油とりもってちょう」 のように食卓などで気楽に使われます。これなどは重たい言葉のカジュアル化ですね。 同じく「よぶ」と言う言葉があります。これはオーイと呼ぶ他に、お招きしてご馳走すると言う意味があります。しかし平針では何もご馳走とまではいかなくても 「兄さまァ、タバコ一本よんでちょうすきゃあ」 と、もらいタバコの時にも使えるのです。 「よぶ」の受身は「よばれる」。ご馳走になる場合のことです。しかし平針では振舞う側が 「お茶一杯よばれてってちょうでゃあ」 というように使います。直訳すると 「お茶をご馳走になっていって下さい」 となります。何だか変ですね。よばれるは「頂く」くらいに解釈した方がよいのかも知れません。 このように公家、ちょんまげ入り混じって日本の古い言葉が(保存状態や活用法はどうであれ)日常でつかわれている平針なのですが、それゆえにかどうかは分かりませんが、ルーツの上品さとはうらはらに悪口言葉の豊富なこと! 全国的には馬鹿(東)とアホ(西)、それに加えてタワケあたりでほぼ事足りるのですが、この地では 「あのヘボはよオ、いっつもぐにきゃあたことばっかし言ってけつがってよォ、何だしらん女や博打にたぼけとるもんで家ん中見てみよ、だりこくにしてけちゃかっとるに。あんなくそぬけ、おがらかしてかべにしたろまい」 と、ここまで言えちゃうのです。これは、 「あの弱虫はいつも愚かなことばかり言ってるうえに、女や博打にうつつをぬかしているから家の中はぐちゃぐちゃです。あんな大馬鹿者はいじめたうえに軽蔑してやろうではないか」 という意味です。「ぐにかやあた」は「愚に返る(=ぼける)」という言葉が変化したものと思われますが、あとは語源不明。「おがらかす」は、ひょっとして麻の皮をはいだもののことをおがらと言いますから、名詞+するが動詞になっている現在の流行り言葉(例:お茶する)のように、ひんむいておがらにしちゃうからきているのじゃないかナ、と考えられます。 さんざん悪口を言いまくった挙句(と言っても口ほどに悪く思っていない場合が多いのですが)、 「アイツとはハマが合わん」 と言えば気が合わないの意味。ハマ? これはきっとハマグリで、貝合わせから来てるのではないでしょうか。 ワァ〜雅(みやび)だわァ。かべにできんなァ、平針人。 |
