楽しみは 春の桜に秋の月 夫婦仲良く3度喰う飯

と、おだやかにいきたいところですが、それはそこ、ここは平針でもありますので、日頃の楽しみもやっぱり何だかダイナミックなのです。

このくらいの季節になると、「ありゃあけでイケセッショーがあるで、みぐち持って行こみゃあか」と誘い合ったのです。これは、「荒池で池殺生があるから箕口(大きなタモのようなもの)を持って行きましょうよ」という意味です。

この池殺生とは、かいどり(平針風に言えばキャードリ)とも呼ばれる漁法で池の水を汲み出して少なくし、消防団の太鼓の合図で平針中の人がみんな池に入り、泥んこになって魚を取っていたのです。平針にはこの荒池の他、現在地名に残っている通り、大堤池・細口池・平池・蓮池などたくさんあったので、この池殺生は大変盛んだったようです。

池では、なまず、鮒、鯉などが「どえりゃあとれておーもしろかったぞよ〜」なのでした。どえりゃあと言えば、おおいにとか、非常にとかの意味なのですが、やはり活用法があって、「えりゃあ」→「どえりゃあ」→「あらけにゃあ」の順にヘビーになっていきます。

ここまでは一般名古屋弁とかわりがないのですが、感動で胸がはち切れるタイプの平針人にとって、3段活用程度では、ものごとを表現しきれません。

そこで「あっらけにゃあー」よりもっとすごい時は「どえらけにゃあ」が活用されるわけです。「どえりゃあ美人だがや」と言われたぐらいでは喜ぶわけには参りません。

話をもとに戻して、平針のアウトドアライフですが、この池殺生の他、「だばすとりにえめぞ」へ行ったり「つぼとりにとんも」へ行ったりもしました。だばすとは、どうびん貝という美味しい貝で、えめぞは小さな川を指します。

また、楽しみは水関係のみならず、山には「桑桃がももぐってなっちょる」し、野には「つくづくし(つくし)がしょべつって帰る」程あったのです。「ももぐる」は鈴なりにいっぱいある。「しょべつる」は肩にぶら下げるの意味です。これら、山川の幸は貴重なタンパク源、あるいはデザートとして、食卓を賑わしたのです。

こうして眺めてみますと、うさぎ追いし、かの山ァ〜は、絶対にうさぎ美味し、かの山〜が正しいと思われるのです。

 

 

 


当講座人称編では男性のことばかりだったから、今回は女性が主役。

人称編でご紹介した通り、平針は同じ苗字ばかり。従って名前のほうも創意工夫のあとがみられるのですが、女性も、しかり。

ヨネ・ウメ・ハナ等のその節ポピュラーな名前だけでは足りず、ヲギ・とう・えい・らいと、まるで掛け声のような名前も誕生していました。

呼ぶ時には「さ」をつけて敬意を表わすのですが、「らい」の場合は当然「りゃあさ」となります。

「あなたのお名前は?」

「りゃあです」
の受け答えで、聞いた人はちゃんと「らい」と書けたのでしょうか。「るん」と言う名も秀伝寺の墓碑にあります。「るーさ」ですね。

ここで、はてな?と思われる方もあるかもしれません。平針特有の創意工夫女性名が、なぜ墓碑にあるいはご健在のおばあちゃん方に残っているのか。女は嫁に行ってしまうのではないか?そうです。多くの平針女は外へ嫁に行かなかったのです。

「平針女に手を出すな」という有名な言い伝えが他所(平針以外の土地)の男性の間にありました。つまり、平針女は「どえりゃあしっかりしとらっせる」ので尻の下に敷かれるのを恐れて、敬遠されたと言うわけです。和市に言わせれば「それ程でもない」ということですが・・・・・・。

また逆に、平針の人には「嫁をとるなら他所の花より郷のクズ」との言い伝えがあり、よく見知った平針同士が一番わかり合えて良いと思っていたようです。

平針女は果たしてカカア天下なのでしょうか。他所の花(?)でありました私の見解を述べますと、やはりカカア殿下です。天下ではありません、殿下です。平針女は文句なしに偉いのです。

私が平針に嫁ぐことが決ったとき、ある人が忠告してくれました。

「平針のお嫁さんはどの人も朝から晩まで働いている。平針の男はきっと、女を女とも思っていないに違いない。こき使われる。やめなさい」

恋ゆえに盲目となった他所の花は、人の忠告に耳も貸さず、当地平針に嫁いできたのですが、噂とはどうも違う。どのおっちゃんもニコニコしてるし、虐げられた風情の女性も見かけない。女の人は確かに働きものだが、重労働も自分のこととして、しなやかにこなし、豪快に人生を笑い飛ばしている。これを立派と言わずに何と言おうか。

かつてウーマンリブレーションのお先棒を担いでいた私は「ウーン、男女の理想的関係がここにある」と唸ってしまったのです。

ただ、どのおっちゃんも自分の鼻タレ時代を女房に見られているので、その点が男の弱みといえば弱みかなァ・・・・・・と思うのだが。

平針弁講座が、思わず脇道にそれましたが、この平針の男と女が例の言葉でどのように恋を語らい、成就させていったかを次頁でご紹介させて頂きたいと思います。